耕作放棄地の崩れた棚田をそのままで再生してみる#1棚田へ行く道がない

数年前に大きな台風で棚田が崩れてしまった。
棚田の再生には、土木の知識や技術、機械も必要で、素人ではなんとも頼りなくて難しい。
しかし、私は米をつくりたい。
どうしても、つくりたいのだ。
じゃあ、そのままでつくったらいいんじゃないか?
というわけで、棚田の再生を始めた。

うっかり始めてしまったのである。

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棚田へ行こう!道がないじゃないか・・・

幼い頃、田植えを手伝った記憶がある。
田んぼの隅っこは機械で苗を植えることができないから、手植えだった。
「てごうしてや」と、おばあちゃん。
私はうれしくて、ズボンの裾をくるくる巻き上げて、水をはった田んぼに小さな手でトポントポンと苗を植えていった。

猫車が通れるくらいの下りの畦道をトコトコ降りていくと、棚田があるはず。
ところが、ところが、その畦道がどこを探しても見当たらない。
しばらくの間、このへんか、このあたりかと行ったり来たりして記憶のたどり着いた場所には、どうやら道がない。
どう見ても、道はない。

そっと足を降ろして、落っこちないかと恐る恐る地面を探すが、手応えがない。

棚田へ行く畦道は崩れてなくなっていた。

棚田への小道をつくる

こんなところ、通れるのかなと地面を探して踏みしめながら、ノコギリ鎌で草を刈り、笹を刈り。
急斜面を竹につかまりながら、降りていく。
うん、行けそうだ。
目の前に現れる竹を刈る。
使うのは、小さなノコギリ。
力はいらない。ザッと引いて刈るだけだ。

根元からは刈らない。
うっかり踏んだら靴底を突き抜けて足の裏に刺さってしまうし、腰の高さくらいがつかまるのにちょうどいい。

よし、進もう。
どんどん、行こう。

草木に覆われた棚田に大きな木がデデデン

草、木、木、笹、木、竹、木・・・
ここが棚田。
信じられないけれども、棚田なんだ。
すっかり、原野に戻っている。

もっと奥まで行ってみよう。

プラスティックの破片がある。
ゴミのようだけど、草や木のような自然なたたずまいだ。

もっともっと、奥へ進みたくなる。
この先に何があるのか、知りたくなる。

大きな木が生えている。
上まで見上げてみる。
高いなあ。

耕作放棄地の棚田再生 田んぼに大木生えてる

笹藪をかき分けて、まだまだ奥へと進む。
薄暗いところから、徐々に明るいところへ。
少し空気の匂いが変わってきた。
道はなくても、たどり着ける。
風が通る、この場所へ。

おおおおおっ!?

水が流れている。
ザワザワと木の葉が鳴っている。
冬の暖かな陽が射している。

うん、いいな。
ここに小さな田んぼをつくろう。
そうしよう。

たくさんじゃなくていい、すこしでいい。
大きな木がそのままあっても、いいんじゃないかな。
ゴミまで自然が包み込んでいるように、余計なことはせず、崩れたまま、自然のままに棚田を再生してみようと思う。
野性あふれる小さな田んぼで米をつくってみたい。