津軽の伝統刺繍こぎん刺し。
布に木綿糸で刺す美しい幾何学模様。
出来上がる作品は、どれも温もりを感じます。
江戸時代、青森県津軽地方の農家の女性たちによって、暮らしの知恵から生まれた手仕事。
寒い冬を越せるように温かく、そして作業着の補強として、日々の暮らしを支えるために、一針一針に家族への思いが込められていました。
始めたばかりのちくちくWORK。
大切にしているスクラップノートに、こぎん刺しブックカバーをつくっています。
大切にしているもの 母の新聞記事の切り抜き
母は、興味のある新聞記事を切り抜いて、とっておくことが習慣になっています。
けれど、また見ることがあるかと言えば、そうでもない。
何十年分もある新聞記事の切り抜きは、紙くずのようでありながらコレクションとも言えるかもしれない。
その中で、私がどうしても譲ってほしかったコレクションがあります。
古い紙箱の中に束ねて入れられていた、植物の絵が描かれたコラム。
見つけたときは、心ひかれるまま読みふけっていました。
片桐義子さんの花ごよみ

花療法家、片桐義子さんの花ごよみは、2008年頃の新聞記事でしょうか。
母の切り抜きをノートに貼って、本のようにページがめくれるようにしました。
植物の特徴が、短い文章の中にわかりやすく書かれています。
花言葉を知るのも楽しい。
例えば、4月に開花期を迎えるハナズオウ。

コラムでは、沢田真理さんが絵を描かれています。
紫紅色は感性を刺激し、内なる才能を引き出してくれる色といわれます。
花言葉 勝利のとき
(新聞記事より抜粋)
植物の特徴と花言葉がつながっていて、自然の贈り物に感嘆してしまいます。
樹出叡さんの植物再見

樹出叡さんの植物再見は、掲載時期はわかりません。
この記事の切り抜きもノートに貼りました。
植物について詳細に解説されており、短い文でありながら読後感があります。
例えば、【八十八夜】お山の茶摘み で紹介したハナイカダ。

コラムでは、鈴木裕美さん他、何人かの方が絵を描かれています。
葉にまるで花が載っているように見えるハナイカダ(花筏)は、大変に風変わりな植物です。
秋、黒い実が一つ葉に載っかっているのもまた風情があります。
(新聞記事より抜粋)
秋に黒い実がなるようですね。
これは、見逃せません。
どちらのコラムも、植物学的な視点から精密に描かれながらも、芸術性を持ったボタニカルアートが素敵です。
母の切り抜きを貼った二冊のノート。
ずっと大切にしてきました。
これからも大切にしていきたいので、ブックカバーをつくろうと思いました。
楽しい布選び 糸選び
布と糸を選びます。
素朴だけれど、あたたかい素材感のあるものにしたいと思い、
布はざっくりした麻布、糸は赤茶色にしました。

特に糸選びには時間をかけてしまいますが、
手触り感がやさしい、つきやさんのこぎん糸701を選んでみました。
初心者であり、3作目なので、できあがった作品のイメージがまだまだ持てません。
きっと、想像できなかったことが作っている途中で起こると思います。
今までは、刺し目を数え間違えたり、段がずれてしまったりして、そのたびに戻って直しました。
一針、一心ですね。
オリジナル図案を考えてみる
もどこをつなぎ合わせて、オリジナル図案がつくれるのも、こぎん刺しのおもしろいところです。
切り抜きに合わせて植物に関するもどこがいいけれど、意味は違っても花びらや葉っぱに見えるようなもどこもいいなと考えています。

もどこを眺めていると、緻密に計算されたデザインに風格を感じます。
一針をつなぎ合わせるだけで、美しい模様になるだけでなく、保温や補強となる実用性があります。
手仕事とは、暮らしを紡いでいくこと。
こぎん刺しを通して見える日々の暮らしは、忙しいだけだった毎日を彩ってくれています。