綿をしまっておいた薄茶色の紙箱。夜、箱の蓋をそうっと開ける。
綿がもこもこ並んでいます。やわらくて、ふわふわ。
元気そうで、うれしい。
綿の種をまく準備をする。
この作業が手間はかかるが、おもしろいのです。
自然のまま 小さな綿の中に種がある
お山の畑では、草と一緒に綿の栽培をしています。
自然のままに育ってくれた綿は、ちょっと小さめ。

1つの綿花に房が3~4つ。一房、3㎝くらい。

この房の中に種が入っています。
綿をほぐしてみると、綿の繊維をまとった種がころんころんと出てきます。
1粒じゃない…
7粒!! こんな小さな房の中に!?

はじめて綿を育てたときは種を譲っていただいたので、綿と種は別々にできるものだと思っていました。
綿の中に種がいっぱいあることを知ったのは、収穫したとき。
綿の中に何か固くて丸いものがあって、取り出してみたら、「種だ!」ったのです。
綿毛を手で取る
綿毛で種が見えません。繊維を手で取る。取る。取る…
指に力を入れないと取れません。
綿繰り機という綿の種と繊維を分ける機械があるのですが、使っていません。
手作業で綿毛を取っていると、種のかたちもいろいろ個性があって、おもしろいなあと気づきます。
並べてみよう。7粒の種と綿。

かりかり、ひょろり、けねげでかわいいですね。
発芽率を考えたら、ふくよか、ぽっちゃり。
どの種を蒔こうか選びながら、のんびり綿毛を取っています。
染めた色ではありません 自然のまま カラーコットン
令和元年、5種類の綿種を蒔いてみます。
綿は白いと思っていました。
綿には、白の他にも色のついたカラーコットンがあります。染色していない自然の色です。素朴で滋味深く、やさしい色彩。
並べてみると、色や素材の違いがわかります。

和綿は繊維が短く、強度、弾力がある。
洋綿は繊維が長く、触れるとほろほろとほぐれていく。
なんだろう…
指先に伝わる優しさ。人の指先の感覚は繊細だなあと感じます。
綿を作って、どうするの?
綿を栽培している と言うと、よく聞かれます。
「そんなもん作って、どうするん?何に使うん?食べられんが。」
綿がかわいくて育てている と言うと、
「作るの大変じゃが。疲れるだけじゃが。」
私もそう思います。
かわいいから、楽しいから、綿を育てるというのは、自分の勝手、都合のようなものです。
種には、いのちが宿っているのに、育てて終わりでは無責任な気もします。
綿に触れていると心がおだやかになるんですよね。
ここに、答えを見つけることができそうです。
あるとき、綿のことを話していると、こんな言葉をもらいました。
「綿の手触り感は、手の感覚から脳に伝わって心地いい刺激になるのでしょうね。リラックスするし。綿を手で糸に紡ぐと指先の動きが運動になるかもしれないですよ。」
種から綿ができて、糸になる。
綿を糸に紡ぐ・・・
そんなことを考えながら、3年目の種まき準備ができました。